開業(独立)したら最初にすべき税務上の手続きは?
それは税務署に開業届を提出することです。
ただ、提出する書類は開業届だけではありません。
状況に応じて複数の書類を提出する必要があります。
今回はこの開業届関係を説明します。
税務署に提出すべき書類は全部で5つあります。
他にも任意で提出する書類がありますが、個人事業主が開業して提出する可能性の高い5つの書類を解説していきます。
個人事業の開業・廃業等届出書
開業しました!ということを税務署にお知らせる書類になります。
開業届は事業を開始した日から1ヵ月以内に所轄税務署に提出する必要があります。
書面で提出する場合には、本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります。
所得税の青色申告承認申請書
青色申告を希望する場合に提出する必要があります。
青色申告承認申請書は、事業を開始した日から2か月以内に提出する必要があります。
そのため開業届と一緒に提出すれば問題ないと思います!
青色申告をするメリットの1つとして、青色申告特別控除と呼ばれる制度の適用を受けることができます。
この制度の適用を受けると、所得金額(利益)から65万円(条件によっては55万円)を控除することができます。
単純に経費を65万円増やせるというイメージで大丈夫です。
その分利益が減り、納税する税金も減ることになります。
デメリットとして、帳簿をしっかりつける必要があるのですが、会計ソフトに正しく入力すれば問題はないかと思います。(正しく入力できるという前提ではありますが。。。)
開業届はご自身で提出しており、途中から税理士をお探しになり、依頼を受けることがございますが、青色申告承認申請書を提出していない方がかなりいらっしゃいます。。。
どうにかなりませんか?と言われますが、こればかりはどうにもなりません。
提出するだけで受けられる制度ですので、忘れずにご提出ください。
青色事業専従者給与に関する届出書
生計を一にする配偶者等に給料を支給する場合に提出が必要な書類になります。
(青色申告の適用を受ける必要があります。)
開業日から配偶者等に働いてもらうようでしたら、開業日から2か月以内に提出する必要があります。
留意点として、配偶者等に支給できる給料の金額は、この届出書に記載した金額の範囲内になります。
それなら高く設定しておけばいいと考えるかもしれませんが、給料として認められる金額は、事業の規模や収益の状況等を勘案して判断されます。
具体的にいくらならいいの?という質問を受けることがよくありますが、ケースバイケースになります。(顧問契約を締結しているお客様には詳細をお話ししております。)
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出することにより、納付すべき源泉所得税をまとめて納付することができるようになります。
従業員を雇う予定がない個人事業主の方は、この項目は飛ばしていただいて構いません。
そもそも源泉所得税とは?ですが、
例えば、お給料から天引きされている税金の中にも源泉所得税があります。
お給料の額面が50万円だとして、丸々50万円はもらえていないですよね?
お給料から社会保険料や源泉所得税、住民税が引かれています。
この源泉所得税部分を会社が変わりに国に納めています。
この源泉所得税ですが、原則は、天引きした月の翌月10日までに納付しなければなりません。
ただ、開業したばかりで従業員が少ない個人事業主の方ですと仕事も忙しく、毎月納付するのは手間もかかり大変ですよね?
そのため給与の支払を受ける人数が、常時10人未満の個人事業主であれば、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出すれば、毎月納付をせずに、まとめて納付することができるようになります。
この書類を提出することにより、納付期限は下記になります。
1~6月分の源泉所得税は7月10日までに納付
7~12月分の源泉所得税は1月20日までに納付
半年ごとに納付するイメージになります。
この書類について1点だけ注意点があります!
この書類は、提出した月の翌月末日に承認があったものとされ、申請の翌々月の納付分から特例の適用を受けることになります。
少しわかりにくい説明になってしまいましたが、下記具体例を見ていただければ、わかりやすいかと思います。
申請書を提出した月が2月中の場合
2月支払いの給料から天引きした源泉所得税→3月10日までに納付(原則)
3月~6月支払いの給料から天引きした源泉所得税→7月10日までに納付(特例)
初回のみ注意しましょうということになります。
従業員が常時10人未満の個人事業主であれば、ほとんどの方が提出している書類になりますので、この書類も忘れずに提出しましょう!
適格請求書発行事業者の登録申請書
令和5年10月1日よりインボイス制度が始まりました。
(インボイス制度の詳細は別の記事に記載したいと思います。)
インボイス制度が始まったことにより、適格請求書(インボイス)を発行するためには、登録をしなければなりません。
その登録のための書類が、適格請求書発行事業者の登録申請書になります。
消費税法が絡んでくるので、ややこしい制度ですが、開業したばかりの個人事業主の方は基本的には消費税の免税事業者に該当します。
開業したばかりの個人事業主が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出すれば、開業日から適格請求書発行事業者になることができ、適格請求書を発行することができるようになります。
たまに勘違いをされている方がいらっしゃいますが、消費税の免税事業者の方であっても、適格請求書発行事業者の登録をすると消費税の納税義務も発生しますので、登録するかどうかはしっかりとご検討ください。
まとめ
上記5つの書類が開業したら税務署に提出すべき書類になります。
従業員を雇う予定がなければ、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は不要です。
適格請求書発行事業者の登録申請書は提出するかどうか検討が必要です。
所得税の青色申告承認申請書は提出するかどうかで、納税額が変わってきますので、忘れずに提出しましょう!
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髙野正義税理士事務所
神奈川県横浜市戸塚区南舞岡3-8-1-2
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