会社を経営しているとパソコンなどの少額の固定資産を購入することがあるかと思います。
皆さんはこのパソコンの会計処理をどのようにしていますか?
「なんとなく会計ソフトに登録している」と答える方が多いかと思います。
果たしてその登録方法で良いのか?
今回は少額な固定資産の経費計上(減価償却)について条文等を確認しながら解説していきます。
*この記事は年間売上高5,000万円以下の中小企業向けの内容になります。
少額の減価償却資産
条文
まずは条文から確認していきます。
条文は難しく書かれているので、読まずに飛ばしていただいても構いません。
内国法人がその事業の用に供した減価償却資産で、取得価額が10万円未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
(法人税法施行令第133条より抜粋)
解説
少額の減価償却資産は10万円未満の物になります。
そのため購入したパソコンが10万円未満であれば、会計ソフトで「消耗品費」などの勘定科目で処理すれば、経費計上することができます。
一括償却資産
条文
内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が20万円未満であるもの(以下この項において「対象資産」という。)を事業の用に供した場合において、その内国法人が当該対象資産の全部又は特定の一部を一括したもの(以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額(以下この項及おいて「一括償却対象額」という。)を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を36で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額に達するまでの金額とする。
(法人税法施行令第133条の2より抜粋)
解説
一括償却資産は20万円未満の物が対象になります。
10万円未満であれば、少額の減価償却資産で処理することがほとんどですので、10万円以上20万円未満のパソコンを購入した際に、一括償却資産として処理するという選択肢があります。
この制度を選択すると3年間(3期間)で償却することができます。
通常のパソコンは耐用年数(償却する期間)が4年になるので、一括償却資産として処理した方が、早く費用化(経費計上)できることになります。
中小企業の特例による減価償却
条文
中小企業者等(青色申告書を提出するもの。)が、平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得しかつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満であるもの(その取得価額が10万円未満であるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)を有する場合において、当該少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき当該中小企業者等の事業の用に供した日を含む事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(当該事業年度が1年に満たない場合には、300万円を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。
(租税特別措置法第67条の5より抜粋)
解説
中小企業の特例による減価償却は30万円未満の物が対象です。
30万円未満と言っても、10万円未満の物は1つ目で解説した「少額の減価償却資産」の規定で会計処理すると思いますので、この制度の対象になるのは、10万円以上30万円未満の物です。
そのため10万円以上30万円未満のパソコンを購入した場合は、会計ソフトで「消耗品費」などの勘定科目で処理すれば、経費計上することができます。
この規定のみ注意点があり、年間合計300万円が限度となっています。
300万円分しか使えないということです。
中小企業にとっては高額ですので、あまり意識する必要はないと思いますが。。。
各制度の比較
ここまで3つの制度をご紹介してきました。
金額的にかぶる部分もありますので、結局どの規定が使えるのかよくわからないという方もいらっしゃるかと思いますので、制度を表にまとめました。
比較表
取得金額等/制度名 | 少額の減価償却資産 | 一括償却資産 | 特例による減価償却 |
---|---|---|---|
10万円未満 | 〇 | 〇 | × |
10万円超~20万円未満 | × | 〇 | 〇 |
20万円超~30万円未満 | × | × | 〇 |
償却資産税 | × | × | 〇 |
表で見るとわかりやすいですね。
結局のところ、判断で迷うのは10万円超~20万円未満の物を購入した場合ですね。
ではどちらの制度で処理した方がいいのか?
そんなの全額で経費計上できる「特例による減価償却」一択!という答えが多いかと思います。
確かに法人の利益を圧縮するという意味では正しいのですが、実は今まで説明していない制度があります。
それが表の一番下に記載されている「償却資産税」です。
いきなり出てきましたね。
なんだよこいつって感じですね。
償却資産税とは!?
土地や家屋が固定資産税の対象になっているのは皆さんご存知かもしれませんが、それが器具備品等も対象になっているのです!詳細に関しましては、自治体のHPをご確認ください。
・横浜市 ・東京都
ただ、償却資産税は課税標準額が150万円未満の場合は課税されません。
*詳細は自治体のHPをご確認ください。
そのため会社の利益状況によって、一括償却資産にして、償却資産税を回避するのか、それとも特例による減価償却で利益を圧縮して、その代わりに償却資産税を納めるのか検討する必要があります。
ここまでくるとご自身で判断するのは難しいと思いますので、税理士にお任せした方が良いかと思います。
最適な方法で処理してくれると思います。
まとめ
今回は、少額の固定資産を短期間で経費計上(償却)する方法をご紹介しました。
制度がいくつもあり、償却資産税という税金も絡んできたので、少し難しかったかもしれません。
会計ソフトで登録すること自体は簡単かもしれませんが、どの制度を使って登録するのか、慎重にご検討いただければと思います。
この記事をもとに、皆さんが少しでも有利な制度を選択できましたら幸いです。
髙野正義税理士事務所
神奈川県横浜市戸塚区南舞岡3-8-1-2
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小規模事業者専門の30代税理士